
- 名前:
- 安田 凜
- 学年/肩書:
- 博士課程前期課程2年
- 役職:
- 掃除当番
- グループ:
- ロボット
- 趣味:
- 筋トレ
- 一言:
- ロボットは…お好きですか?
研究テーマ / Research topic
面状プレートと細径人工筋を併用した着衣型アシストスーツの開発
研究背景
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ヒトの身体に直接装着して動作を補助するアシストスーツが、農業・介護分野を中心に広く注目されている。現在、硬質なフレームで身体を覆う外骨格型のアシストスーツが一般的である。外骨格型スーツは外部からかかる負荷をフレームが引き受けてくれるため、高負荷な用途で安全に利用できるという利点がある。
一方、外骨格型スーツは、動作自由度の点で課題を抱える。一般的な外骨格型スーツは、ヒトの関節の動作に沿って可動する回転関節を有している。そのため、外骨格の関節数や自由度によって、身体関節の自由度は制限される。肩部や体幹部など多自由度の関節部に対し多自由度運動を補助する機構を搭載するためには、外骨格の関節を増加、複雑化させる必要があり、大型化・重量化といった問題を引き起こす。
本研究では、柔らかく駆動する細径人工筋を用いて、軽量・柔軟で衣服のように着用でき、多自由度動作をアシスト可能なアシストスーツを開発することを目的とし、スーツの動作機構についての研究を行っている。
提案する着衣型アシストスーツの構成

着衣型アシストスーツの構成イメージ
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提案する着衣型アシストスーツの構成を上に示す。本スーツは素地に柔軟で伸縮性があり身体に密着する衣服を用いる。衣服上に硬質・薄型の面状プレートを貼付し、フレーム間を細径人工筋で接続する。人工筋を駆動することで収縮力によりプレートが可動し、体動作をアシストするといった駆動原理である。
プレートの貼付部位を関節動作を阻害しない位置に限定し、関節部には柔軟な細径人工筋のみを装着することにより、スーツは関節動作を阻害せず、無理なく多自由度アシストを実現できる可能性がある。また、体表に貼付したプレートは衣服や皮膚表面のように容易には変形しないため、外骨格型スーツのフレームのように、細径人工筋の発揮力を身体に効果的に伝達する効果を持つ。
人工筋とは
人工筋とは、まるでヒトの筋肉と同じような動作特性を持つアクチュエータのことである。本研究では、McKibben型空気圧ゴム人工筋(以下McKibben型人工筋)という、空気圧によって駆動する人工筋を使用している。McKibben型人工筋は、内部のチューブに空気圧を印加することで径方向に膨張し、軸方向に収縮する。McKibben型人工筋は、重さに対して発揮する収縮力が非常に大きいという特徴が注目され、アシストスーツを含む様々なデバイスへの適用に向け研究が進められている。本研究では、McKibben型人工筋の中でも細径なものを使用し、柔軟性を活かしてヒトの自由な動きに対するアシストの可能性を探求している。
薄型面状プレートとは

背面プレートを貼付した様子
薄型面状プレートは、炭素繊維複合材製で、3Dプリンターを用いて作製している。薄型面状プレートを衣服上に貼付した場合、衣服の形状変化を抑制し身体に対して密着することで、貼付しない場合と比較して駆動角度が向上することを確認している。
これまでの研究内容

肘屈曲駆動の様子

体幹伸展駆動の様子

肩外転駆動の様子

肘部フィードバック制御実験の結果
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単関節部位である肘関節の屈曲動作[1]、多数の関節が連結する体幹部の伸展・回旋・側屈動作[2, 3]、及び肩部の外転・水平内転動作[4]について、人工筋配向を決定し駆動実験を行った。実寸大のマネキン(リアル介護練習人形「ゆるり君」, ヒューマンドール社)にスーツを装着し、駆動したときの駆動角度を評価した。各動作方向は異なる人工筋によってアシストされるようになっており、体幹部・肩部は、複数方向の人工筋の同時駆動により合成方向の駆動が可能であることを確認した。この結果より、着衣型アシストスーツによる多自由度アシストの実現可能性が示唆された。
また、着衣型アシストスーツの安全性及び制御可能性を検証するため、肘部スーツに接触力分布センサを適用し、フィードバック制御実験を行った[5]。駆動中のスーツと着用者との間の接触力は、圧痛閾値の3%程度であった。また、ステップ指令に対し最大1.6deg程度の誤差で収束した。この結果は、スーツの安全性及び、スーツが装着者の意図通りのアシスト力を発揮可能なシステムの実現に一歩近づくものであるといえる。
参考文献
[1]安田 凜, 舟洞 佑記, 道木 慎二, “体表に細径人工筋と面状フレームを配置した腕部アシストスーツの試作”, Robomech2023 予稿集, 6, 2023.
[2]安田 凜, 舟洞 佑記, 道木 慎二, “体幹の複雑な運動をアシストする着衣型アシストスーツの試作”, 計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会予稿集, 12, 2023.
[3]安田 凜, 舟洞 佑記, 道木 慎二,“体幹部の多自由度運動アシストに向けた着衣型アシストスーツの構成検討”, 第25回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会予稿集, 2024.
[4]安田 凜, 舟洞 佑記, 道木 慎二,“肩部の複合動作をアシストする着衣型アシストスーツの試作”, Robomech2024 予稿集, 2024.
[5]Rin Yasuda, Shinichi Masaoka, Yuki Funabora, Shinji Doki,“Prototype of Funabot-Plate: Contact Force Base Controlled Wearable Assistive Suit with Rigid Plate”, 50th Annual Conference of IEEE Industrial Electronics Society, 2024.